東京工業大学 実大加力実験工学共同研究講座

[1] 巨大建設物の安全性はどのようにして担保されているのか?

 

日本は世界でも有数の地震大国であり、多くの地震により被害を受けてきました。
建設物の安全性は、それを支える構造部材に依存しています。
 
地震で構造部材に予期せぬ被害が起きた場合は、その都度、研究機関が
実験装置により構造部材に力をかけることで性能の確認と改善が行われました。
実験結果をもとに、設計基準(建築構造設計基準・道路橋示方書・土木関係構造物設計示方書など)が整備されてきました。

 

しかし、実験装置にはかけられる力や速度に限界があります。

 

現代の都市に林立する巨大建設物には大型構造部材が用いられていますが、
実験装置の限界のため、それらの実物の性能は確認されていません。
特に日本では実験装置が比較的小規模であることから、実際の部材の縮小模型(縮小試験体)を実験して、
実物大の部材の性能を推測できるよう努力がなされています(図1-1a-c)。

 

 

図1-1a

 

 

図1-1b

 

 

図1-1c

 

ただし、構造部材や材料の種類によっては、縮小模型に比べて、実物が壊れやすいという“寸法効果”の問題があり、
それが学術的に未解明な場合も多いため注意が必要です。
これをふまえ、海外では早くから大規模の実験装置が作られ、
実物大の実験がよく行われてきました。
そのため、特に日本の免震支承や制振ダンパーなど建物の安全性を高める役目をもつ構造部材に関しては、
海外の実験施設で実物大の実験を行い、寸法効果の程度を把握して、日本で行う縮小試験体実験の妥当性の確認がよく行われています。

 

一方で、これまで以上に強い地震が起きている昨今、今後の大型構造部材の性能向上が望まれています。
そのために実物大の実験の必要性が高まり、より海外に依存することになり、
日本の技術革新、安全性向上、国際競争の面で、厳しいハンディキャップとなっています。
また、最近必要視されている長周期・長時間地震動に関する実験は、海外の施設でも不可能な状況です。
大規模かつ高性能の実験施設が、日本に必要です。

 

 

関連リンク

[0] 講座紹介
[1] 巨大建設物の安全性はどのようにして担保されているのか?
[2] 大型構造部材における“寸法効果”とは?
[3] 海外で次々と建設される大型実験施設および日本の立場
[4] 免震ゴムの性能データ改ざん事件と第三者機関の必要性
[5] 日本に世界最高の大型実験施設を!
[6] 構造部材破壊現象検討研究会での実験計画