東京工業大学 実大加力実験工学共同研究講座

[4] 免震ゴムの性能データ改ざん事件と第三者機関の必要性

 

免震ゴムの性能データ改ざん事件に対し、2015年5月8日に
国土交通行政の基本施策に関する件(東洋ゴム工業問題)」という議題で衆議院国土交通委員会が開かれました。
(詳細については国会会議録検索システムからご確認ください)

 

以下は笠井和彦特任教授により、会議録を一部抜粋し要約したものです。

 

参考人として高山峯夫氏(福岡大学教授)、北村春幸氏(当時東京理科大学教授)は、
委員の質問に対し回答し、以下にその内容を要約します。

 

1. 実物大の試験ができる装置を第三者機関として我が国に設置することができたら、
  今回のような不正な事案は未然に防げるのではないかと思っている(高山教授)。
2. 2003年から問題になっている長周期地震動に加え、今後のいろいろな地震を考えると、
  実大の積層ゴムを動的に評価できる装置があれば、
  もっといい技術が生まれるという余地はあるかと思っている(北村教授)。

 

また、国土交通大臣(当時)太田昭宏氏の政府側からの見解を以下に要約します。

 

1. 物づくりということから、品質管理、技術開発の面で念には念を入れるのが生命線だと思う。
  それを逸脱して、十数年間(不正が)続いたということは重大なことだと思っている。
2. 振動台自体は自分が実験をしていたときからあるが、上から圧力をかけながら地震動をかける
  免震技術のための振動台が日本にそろうことは大変良いことだと思う。それに関わった私としては欲しいと思う。

 

後日、事件の再発防止を検討する「免震材料に関する第三者委員会」が設置され、
これまでの議論が公表されています。
その内容は、主に検査の方法と責任体制に関するものであり、第三者機関や装置の具体案は出ていません。

 

ここに我々は、真理を探求する大学に、第三者機関と装置を設けることを提案します。
中立な立場にあり、かつデータ精度と内容を最重要として、より良い計測・実験方法を
常に求めている大学研究者が集まって第三者機関の運営を行うという提案です。

 

 

東京工業大学ほか他大学の研究者が運営委員会を構成し、その傘下の第三者機関は、
守秘義務を守りながら企業による製品の開発や認定の実験を行うものであり、
その収入により人件費や維持管理費を賄います。
大学研究者が、企業に対し実験方法の助言・指導を行うなど、
より有意義なデータが得られるような体制もつくります。

 

なお、欧米では第三者機関を大学におくことはよくあります。
国や自治体などが高価な施設を大学につくり、大学はその施設を企業や他大学に開放するもので、
施設は財政的に自立しています。

 

我々の提案も、国の安全と産業の発展に不可欠なこととして、
政府に施設の建設費用は賄って頂きたいと考えていますが、
その後の運営・維持管理は、政府に頼らず、大学が専門業者と共に行うという内容です。
このように、指定国立大学として産学連携を推進する東京工業大学が、
他大学と共にこの施設を運営することで、産業界に著しく貢献できると考えます。

 

 

関連リンク

[0] 講座紹介
[1] 巨大建設物の安全性はどのようにして担保されているのか?
[2] 大型構造部材における“寸法効果”とは?
[3] 海外で次々と建設される大型実験施設および日本の立場
[4] 免震ゴムの性能データ改ざん事件と第三者機関の必要性
[5] 日本に世界最高の大型実験施設を!
[6] 構造部材破壊現象検討研究会での実験計画